大館生まれのヴァイオリニスト (2009/01/23掲載)

 気持ちを新たにして迎えた新年も、ふと気付くと既に20日を過ぎ、光陰の速さをシミジミと実感している今日この頃。“少年老い易く学成り難し”を肝に銘じて、毎日を一生懸命生きたいなぁと思っているわけであります。
 さて、前回の桜町通信でもお知らせしましたが、大館生まれのヴァイオリニストである佐藤久成(さとう・ひさや)さんのリサイタルを開催することになりました。ピアノに寿明義和(じゅめい・よしかず)さんを迎え、3月15日(日)14時開演、大館市民文化会館大ホールでの開催です。今回は当館友の会共催ということもあり、チケットが一律1000円という非常にお求め易い料金設定にすることができました。さらに小中学生については入場無料(要整理券)ですので、久成さんのファンの方も、そうでない方も、この機会にぜひ鑑賞していただきたいと思います。
 ところで「大館生まれのヴァイオリニスト」と「大館が生んだヴァイオリニスト」。似ているようで、全然意味合いが違う言い回しですが、前段で書いたように、久成さんは前者の「大館生まれの〜」にあたります。ご両親が大館出身ということで大館に生まれましたが、生後は埼玉の上尾、4歳以降は春日部で育っているので、厳密に言うと「大館生まれで、春日部が生んだヴァイオリニスト」であるわけです。
 もしも久成さんが大館で育っていたならば、久成さんはヴァイオリニストになっていたでしょうか?仮定の話で大変恐縮ではありますが、きっと、今のように世界で活躍するヴァイオリニストにはなってなかったように思います。ヴァイオリンの道に進むためには、子供の頃からヴァイオリンに触れ、ある程度しっかりした指導を受ける必要がありますが、残念ながら大館にはそういった環境が整っていません。ピアノや吹奏楽をやっている子供たちは少なくありませんが、ヴァイオリンを含む弦楽器となると、市民オケやジュニアオケがあるわけでもなく、学校の部活があるわけでもなく、私の知る限りでは、指導者が豊富にいるわけでもありません。そういう環境でヴァイオリニストが育つとは考えにくいし、そもそも子供たちが「ヴァイオリニストになりたい!」と思う機会すら少ないでしょう。別に音楽の世界に限った事ではありませんが、環境によって子供たちの選択肢が限られてしまうというのはとても残念なことだと思うのです。
 目標を持つことや、目標に向かって努力することは、子供たち個々の資質や才能かもしれません。ただ、そのための環境づくりは我々大人に課せられた使命です。その意味でも、我々は地元ゆかりのアーティストをドンドン応援していきたいと思っています。せっかく大館生まれのヴァイオリニストである久成さんがいて、こうしてリサイタルに来てくれたりもするのですから、我々はこの関係をもっともっと大切にしていかなければなりません。その活動やその経験が少しでも大館にフィードバックされ、大館で音楽を志す子供たちにより良い環境がもたらされるように。そしていつか、大館生まれのアーティストが大館にもたらしたものによって、そこから「大館が生んだアーティスト」が誕生したら最高だと思うのです。そんな日を夢見て、これからも久成さんを応援していきたいと思いますので、みなさんも「地元ゆかりのアーティストたち」を応援してあげてください。(山)