日本の話芸を愉しむ (2008/07/18掲載)

 落語立川流家元・立川談志の自宅には「らしく、ぶらず」と書かれた大きな額が飾られているのだそうです。黒門町の師匠として有名な“昭和の名人”八代目桂文楽の手によるものですが、この言葉、凄く素敵だと思いませんか?八代目文楽は「噺家らしくしてなさい。決して噺家ぶるんじゃありませんよ」と弟子を育てたそうですが、この感覚というかセンスは噺家に限らず、何事にも当てはまる大切なものだと思います。私も大館市民文化会館のスタッフらしく、決して“ぶる”ことの無いよう肝に銘じて仕事をしていきたいと思っているわけです。
 そもそも何をもって噺家らしいと言うのかは非常に難しいと思うのですが、まぁあくまで個人的な感想を言わせてもらうと、今年の「おおだて特選落語会vol.12」の高座に登場する柳家さん喬さんなどは、本当に噺家らしい噺家なのではないかと思うのです。さん喬さんは、大館でも御馴染みの柳家喬太郎さんの師匠で、今回が大館初登場。決して派手さはありませんが、折り目正しく美しい高座姿と、古典の王道をひたすらに歩む芸風は、まさに“噺家らしい”と言えるのではないでしょうか。あたかも映画や演劇のワンシーンを観るような、こちらの想像力をグイグイ喚起する話芸の凄さは、人情噺でこそ最大限に発揮され、「落語っていいなぁ」とシミジミ思わせてくれる噺家さんのひとりなのです
 さて、前置きが長くなって、前置きだか本題だかすっかりわからなくなってしまいましたが、せっかくなので告知を少々。前段で触れたとおり、今年もやります「おおだて特選落語会」。今回は「おおだて特選落語会vol.12〜柳家さん喬・喬太郎親子会〜」と題しまして、9月26日(金)19時開演、中ホールでの開催です。この会をお客様に紹介すると「へぇ?このふたりは親子なんだねぇ?」なんて驚くお客様が意外といらっしゃいますが、いやいや、落語の世界では、師匠と弟子が共演する高座を「親子会」と称しまして、さん喬さんと喬太郎さんはホントの親子ではありませんので、勘違いなさらないように。いずれにしても、古典の王道を行くさん喬さんと、古典と新作の二刀流である喬太郎さんの師弟共演は、見応えのある高座になること間違いなしです。乞うご期待。チケットは7月27日(日)9時より一般発売開始です。
 話芸つながりでもうひとつお知らせを。以前喬太郎さんとSWA(創作話芸アソシエイション)で一緒に活動していた講談師・三代目神田山陽さんの独演会が開催されます。先日の桜町通信でもご案内しましたが、8月9日(土)13時開演で、大ホール舞台上のカヤの中150席限定でのご案内です。こちらはチケット好評発売中ですのでお早めにお求めください。
 8月9日(土)神田山陽独演会、9月26日(土)さん喬・喬太郎親子会と、どちらも日本の話芸を存分に体感いただける催物ですので、みなさまお誘い合わせの上、ぜひお運びください。(山)