文化会館の職人たち―舞台スタッフ (2008/02/01掲載)

 文化会館を利用する人にとって「文化会館の顔」は誰でしょうか。
文化会館には館長以下いわゆる「職員」の他に、4つの専門領域を担当する常駐の「スタッフ」がいます。ホールの舞台・音響・照明を担当する「舞台スタッフ」、冷暖房や電気設備の管理運転などを担当する「空調スタッフ」、それから「清掃スタッフ」と「駐車場管理スタッフ」です。どれひとつ欠けても文化会館の運営に支障をきたす大事な仕事をしてもらっています。それぞれの仕事について、折をみて皆さんに紹介したいと思いますが、今回は観客の目にはあまり触れないものの、出演者にとっては間違いなく文化会館の顔である「舞台スタッフ」の巻。

 華やかに見える舞台ですが、実は危険がいっぱいひそんでいます。上から幕やライトが落ちてきたり、当館にはありませんが床下の空間である奈落に転落したり、電気系統や火気の事故があったり、大道具が倒れたり、段取りが悪くて進行がグチャグチャになったり…、例を挙げたらキリがないほどです。こういった事故を未然に防ぎ、つつがなく舞台を進行させているのが舞台スタッフなのです。当館には、時々本式に雪駄を履いて作業するNさんを始め、Sさん、Iさんの3名が常駐しています。

 舞台スタッフは時と場合によりいろいろな職業に見えます。音響・照明技術者はもとより、大工、とび職、電気技師、プログラマー、設計士、紙切り職人のようなもの、アドバイザー、カウンセラー、ステージマネジャー、清掃員、タイムキーパー、ディレクター、プロデューサー…。つまり何でもやっているんです。あ、でもでも、特に主催者の皆さん、勘違いしないでくださいよ。いま挙げた内とくに後半は、彼らの本来の仕事ではないのです。ホール付き舞台スタッフの仕事は、本来利用者が使えるようにして会場と機材を提供し、事故のないようフォローするところまでなのです。当館のスタッフはプロが揃って性格もいいので、だいぶ踏み込んでサービスしてくれますが。

 ところで、舞台用語にはいろいろ変わった言葉があります。まずは「なぐり」、さて何のことでしょう。「かわいがり」とは関係ありませんよ、舞台で使う金づちのことです。「介錯(かいしゃく)」は自殺幇助ではなく、手助けすることですが、さすがにこれは実際に聞いたことはありません。「殺す」は物が動かないよう確実に固定すること、「ばらす」は舞台が終わって元通りに片付けることです。物騒な言葉ばかり並べてしまいましたが、雑学はこの辺で。

 と言うわけで、ホールを借りる皆さん、舞台スタッフにあまり無理を言わないように。でないと「ばらすぞ!」と言われちゃいますよ。言いませんけどね。

 最後に業務連絡を。あすとあさっては『昭和名画座』。往年の名画を一挙4本立てで、全部見ても一日5〇〇円。当日券も同じです。今回は名匠成瀬巳喜男監督特集、10時開映です、どうぞお忘れなく。 (陽)