職人監督と呼ばれた男 (2008/01/18掲載)

 皆様、今年のお正月はどのようにお過ごしになりましたか?ご実家に帰省された方や、旅行に行かれたという方、楽しまれましたか?また、近頃すっかり定着した元日営業のために、ずっと仕事をしていたという方も大勢いると思います。皆様、大変お疲れ様でした。私の場合は、おそらく大多数を占めるであろう“自宅でゆっくり派”です。そして、好きな映画のDVDを5〜6本借りてきて、お酒とおつまみをスタンバイ、いざ再生!といきたかったのですが…、結局はそんな暇もなくあっという間に過ぎていきました。

 ふと思うと、今でこそ映画はDVDでお手軽にというのが主流になってしまった私ですが、昔はよく映画館に行ったものです。あの観音開きの大きな黒い扉や、そこから漏れ聞こえてくる映画の音声。そして、辺りに張り巡らされたポスターの数々。全てがこれから始まる映画の期待感を増幅させてくれるアイテムでした。私は、すかさずパンフレットとお菓子を買い、期待に胸躍らせながら上映時間を待ったものです。個人的には、現在のような設備の整ったシネコンもすばらしいと思いますが、あの昔ながらの“映画館”という雰囲気がすごく好きなんですよ。そんな方も多いのではないでしょうか。

 そこで、もうすぐ開催される『昭和名画座』で、懐かしい雰囲気とあの頃の記憶を呼び覚ましてみませんか?5回目となる今回は、日本の第4の巨匠と呼ばれる成瀬巳喜男監督の「めし」「おかあさん」「浮雲」「乱れ雲」の4作品です。

 成瀬監督は、明治38年8月20日東京生まれで、大正9年に松竹蒲田撮影所に入社します。その後、「チャンバラ夫婦」で監督デビューするも、当時の城戸所長に「小津は2人もいらない」と言われたらしく、しばらくは不遇の時を過ごします。後にPCL(東宝の前身)へ移籍し、「妻よ薔薇のやうに」でキネマ旬報ベスト1に輝きます。その後、フリーの監督になるなどして「めし」や「浮雲」など数々の名作を世に送り出しました。後に、城戸所長が成瀬監督の移籍を後悔したとかしないとか…。そんな成瀬監督は、無口で無駄のない撮影(いつも定時で終了)と編集をし、制作費と制作日数も決してオーバーすることがない『職人監督』と言われました。

 上映についての詳細は、2月2日(土)、3日(日)の2日間で両日とも午前10時より上映開始。上映順は、初日が「めし」〜「乱れ雲」、翌日は逆順で「乱れ雲」〜「めし」となります。会場は中ホールで入場料は500円。なんと、この1コイン500円で4本全て鑑賞することができるんですよ。とってもお得ですよね。食事などでの途中入退場もできますので、ご自分の用事や体調と併せてご覧くださいね。ちなみに、2日間ともご覧になる場合は、1000円となりますので、あしからず。チケットは各プレイガイドにて発売中です。年に1回だけの機会ですので、どうぞお見逃しなく。ちなみに、今回上映される「乱れ雲」では、十和田湖も舞台の1つとなっておりますので、当時の懐かしい風景が映し出されることと思います。この辺も見逃せないところですね。

 一生懸命に生き、全てが輝いて見えた『昭和』という時代。あの古き良き想い出を、昭和名画座とともに…。(工)