『文化会館のふたつの挑戦』 (2006/08/18掲載)

●オリジナル企画としての「夏草の詩」
大きく分けて文化会館の自主事業は三つに分けられます。ひとつは、鑑賞機会提供を目的としたステージ公演。次に市民参加やワークショップ、アウトリーチなど、市民の文化芸術力を高めるための参加・学習機会づくり。そして三つ目に、会員組織や各種情報提供など文化芸術の環境づくりです。
事業としてはプロによるいわゆる買い取り公演が目につきますし、買い取り公演しか行わない会館も多いのですが、大館市民文化会館ではいろいろな手立てで参加機会づくり、文化芸術環境づくりに努めてきました。

八月二十日午後二時からの「夏草の詩〜甦る廃校の校歌・中学校編〜」は、市民の参加機会づくりと文化資産の記録事業というふたつの面を持った自主企画イベントです。昨年の小学校編と違い、なるべく卒業生自身に歌ってもらうなど手づくり度の高いイベントとして企画しました。出演は廃校になった各中学校の卒業生のほか、大館ジュニアコーラス、大館第一中学校合唱部の皆さん。そして今や大館の名物(?)となったダックスムーンのミニコンサートも行います。
このイベントは「ピアノマラソン」や「ミュージックランチ」などと同じく、企画力や文化資源の発掘など会館事業の枠を広げる試みです。卒業生のみならず、地域文化に興味のある皆さまのご来場をお待ちしております。

●演奏の世界標準とは
一九八〇年のショパンコンクールの優勝者ダン・タイ・ソン。ベトナム戦争のさ中のハノイに少年時代を過ごし、アジア人として初の栄冠をつかむまでの波乱万丈の物語も世界の注目を集めましたが、何よりショパン演奏のすばらしさで愛されてきました。それが、四〇代に入る頃から持ち前の繊細さに楽譜の読みの深さが加わった柄の大きな演奏を行うようになり、世界各地で絶賛の記事が目に入るようになって来ました。特に今回大館でも取り上げたオールロシアプログラムは、ソンが留学した青春の地ロシアへのオマージュとして彼自身が演奏を熱望したものであり、ロシアを始め欧米で絶賛されているものです。

当然ながら公演料も高い世界で一流と目されるピアニストの公演を行うこと。そしてショパン抜きのプログラムを行うこと。ふたつの意味でダン・タイ・ソンのリサイタルは当館にとっての冒険です。東京公演九千円のところ、当館ではS席五千円、A席四千円、高校生以下は二千円で提供します。世界レベルのピアノをぜひ聴いてください。八月十九日(土)一般発売開始。(陽)