『「望郷のバラード」と天満敦子』 (2006/04/21掲載)

ルーマニアで一番有名な日本人バイオリニストとは誰か。五島みどり?諏訪内晶子?いや違うんです。その答えは天満敦子(てんまあつこ)その人なのです。天満敦子といえば「望郷のバラード」と思い浮かぶ方も少なくないと思いますが、天満さんがルーマニアで一番有名な日本人バイオリニストであることは、この曲との出会いに深いかかわりがあるのです。

 近年、小林亜星編の「ねむの木の子守歌」や、夏川りみでお馴染みの「涙そうそう」などポップス系の曲での活躍も目立つ天満さんですが、やはり「望郷のバラード」が代名詞と言っても過言ではないでしょう。5千枚売れれば大ヒットと言われるクラシック界で、この「望郷のバラード」は5万枚以上という異例の驚異的大ヒットとなりました。「望郷のバラードの天満というレッテルは本望。一生言われたい」という本人の言葉が、天満さんにとってもこの曲が大きな存在であることをうかがわせます。

 一九九二年のルーマニア。一人の日本人女性バイオリニストが「文化使節」として首都ブカレストを訪れていました。国立フィル(ジョルジュ・エネスコ響)と競演したその公演は人々を熱狂の渦に巻き込み、その演奏を聴いた同国文化大臣が「ダヴィッド・オイストラフ以来の感激だ」と叫んで、公務の日程を変更してまでコンサートに通い詰め、当初予定に無かった晩餐会まで開いて歓待したほどだったと言われています。その女性バイオリニストこそが天満さんでした。そして天満さんはその公演により、バイオリニストとしての評価を得ると同時に、秘曲”バラーダ(望郷のバラード)”を託されることとなったのです。そのエピソードは紙面の関係上書ききれないのですが、またいつかの機会に紹介できればと思っています。

 ということで、その天満敦子さんが、愛器ストラディヴァリウスを携えて大館にやってきます。六月二十一日(水)大館市民文化会館大ホールで、"望郷のバラード"を中心にポップスを含めたプログラムをお届けします。天衣無縫な語り口と極めてナチュラルな天満さんの魅力が満載のステージ、ぜひ天満さんに会いにきてください。五月五日チケット発売開始です。(山)