三者三様「落語」を語る (2012/03/16掲載)



 今回の桜町通信は、スタッフ3人それぞれが「落語」をテーマに語るということで、全く打ち合わせナシでヨーイドン。さて、どうなることやら…

■落語の愉しみは落語会にあり

 はるか昔の学生時代の話。せっかく東京に来たのだから寄席にも行ってみなくちゃ、と出掛けたのが池袋演芸場です。入ってびっくり、客がいない!いえ、いることはいました。片手で数えられる程。それでも落語家や漫談、手品師が次から次に出てくる、それがまあ見事につまらないという、散々な寄席初体験でした。今思うと、見てる方も辛かったけど、あんな入りでは演ってる方もさぞや辛かったことでしょう。

 そんな時代を知っているだけに、今の落語人気はうれしい限りです。大館でも毎年落語会を開催できているし、固定客もそれなりについてきました。ただ、残念なのはなかなか中ホールが満員にまでならないこと。それから、いまだに笑点メンバーが落語の最高峰だと思っている人が少なからずいることです。

 笑点メンバーがダメという話ではありません。おおだて特選落語会にも昇太さんやたい平さんが出演しているし。ただ、笑点とホールの落語会は全くの別物なんです。笑点でも落語は演じられますが、何しろ持ち時間が短い。寄席でも、トリを務める主任以外はあっさりと演って下がります。お目当ての落語家をじっくり聴くには、だから独演会やホール落語に限るのです。

 結論はつまり、大館の人はわざわざ東京に行かなくてもおおだて特選落語会で最高の落語を観られるということです。熱心な落語ファンでなくても当落語会を見ておけば、十年か二十年後かに「その名人なら大館で聴いたなぁ」とさりげなく自慢できますよ。

 将来自慢できる落語家の有力候補の一人が、そう、立川志らく師匠です。もっとも木戸銭が二千円と言ったら、今でも落語好きにはうらやましがられますけどね。(陽)


■生の面白さ

 いや〜、落語って面白いとは思うけど、ちょっと好んで観るという感じではないんだよなぁ〜。ほら、笑点とかならテレビで観ることあるけど…。と言う台詞に心当たりのあるあなた!そう、そこのあなたです!って、実は10年程前の私のことなのですが、2002年に開催された「第1回おおだて特選落語会」でこの考えは見事なまでに覆されました。

 当時の出演は、当館でもお馴染みの三遊亭白鳥師匠。中ホールの程良い空間に広がる、独特の雰囲気と間。そこに、あの白鳥師匠の珠玉のネタですから、腹を抱えて笑ってしまい、あやうく仕事を忘れそうになるほどでした。これも、生の高座であるからこそ生まれた感情であり、初めて知ることができた落語の面白さであったと思います。

 つい先日、東京出張の際に新宿で観たよしもとの舞台もそうでした。たくさんの芸人さんが出演した舞台は、テレビでは味わうことのできない、全く違う雰囲気と楽しさがそこにはありました。某芸人さんの見事なまでの客いじり、本当に最高でした。

 笑いには、日々の辛いことや悲しいことを少しだけ和らげてくれる力があります。皆さんも、ぜひ"生"の『落語会』や『よしもと』で、笑いのある楽しい一時を過ごしてみませんか?(工)


■新作のススメ

 落語はよく「古典落語」と「新作(創作)落語」という分け方をされるのですが、かなり大雑把に言うと、江戸〜明治頃までに原型が成立し、戦前までに演出が確立した演目を「古典」、それ以降に作られたものを「新作落語」と呼んでいます。音楽に例えると、古典=スタンダード、新作=ロックとかポップスとかってとこですかね。まぁ個人的にはどちらも好きなんですが、所謂“落語ファン”の中には「古典こそ落語だ」と、新作をあまり好まない方もいらっしゃいますので、今回は新作のススメを少々。

 一般的にも落語=古典というイメージは強いのかもしれませんが、新作を演る落語家さんは意外と多いんです。中でも個人的にお勧めなのが立川志の輔と柳家喬太郎のふたり。志の輔の「みどりの窓口」や「歓喜の歌」、喬太郎の「ハワイの雪」や「午後の保健室」など名作揃いなので、新作ビギナーにはもってこいだと思います。このふたりに関しては古典も素晴らしいので、ぜひ聴いてほしい落語家さんですね。それに続くのが立川志らくのシネマ落語や立川談笑の改作、春風亭昇太や三遊亭白鳥の爆笑系など挙げだすとキリがないですが、今はレンタルショップに落語のCDが置いてあることも珍しくないですし、Youtubeで落語が聴けちゃう時代ですから、今まで食わず嫌いだった方、新作に興味はあったけど聴いたことがなかった方、とりあえず一度聴いてみることをお勧めします。まぁ好みの問題ですから、無理に新作を聴けとは言いませんがね。あ、今さらですが、この文章は私の独断と偏見に満ち溢れていますので悪しからず。

 ということで、志らくさんについて殆ど触れなかったことを反省しつつ告知です。3月24日(土)18時30分より「おおだて特選落語会17−立川志らく独演会−」を開催。チケットまだあります。皆さまぜひお誘いあわせの上ご来場くださいませ。(山)