『すばらしき自己満足の世界』 (2006/02/03掲載)

いつも観客が少ない、もっと集客努力を...と言われ続けている『ピアノ・マラソン』。たしかに、そのとおりです。演奏を聴いているのは、家族や親戚がほとんどで、一般のお客様は数える程度。これでは言われても仕方ありません。ですが、この場を借りて言わせてください。“それでもいいんです”と。

もちろん、観客は少しでも多い方がいいと思いますし、自分の演奏をたくさんの人に聴いてもらうのは良い経験です。ですが、ピアノ・マラソンには初心者の小さい子どもさんから経験豊富なベテランまで様々な方が出演します。その初心者の方が、大ホールいっぱいの観客の前で躊躇なく演奏し、自分の演奏を楽しむことができるでしょうか。きっと、そんな余裕は無いと思います。ピアノ・マラソンとは、そんな重苦しいコンサートなどではなく、気楽に楽しんでいただくものなのです。

大ホールでスタインウェイを演奏できるという“特別”な状況を、ただただ楽しんでもらいたい。そして、もっと気軽にピアノに親しんでもらいたい。これこそが開催する一番の理由です。上手に弾かなきゃいけない、そんなことは断じてありません。失敗したっていいんです。演奏者が聴かせたい人に聴いてもらい、自分が満足すればそれでいいのであって、観客の多い少ないを気にする必要はありません。この独特の「自由さ」と「緩さ」がピアノ・マラソンには必要なのことと思っております。そう、それはまさに『自己満足の世界』なのです。

もちろん、これには聴く側のマナーも非常に重要となってきます。いくら自由さが売りと言っても、「演奏中に歩き回る」「おしゃべりをする」等といった行為は、すばらしい演奏を台無しにするだけでなく、他のお客様にもご迷惑をかけることになります。皆様のご都合もあると思いますが、出来る限り会場内の移動は曲間でお願いしたいものです。

皆様、これからもどうか『ピアノ・マラソン』を温かく長い目で見守っていってください。そして、いつの日か大館から世界に羽ばたくピアニストが誕生するとうれしいですね。『昔、ピアノ・マラソンに出てたよ!』と言って...。ちなみに、秋田県青少年音楽コンクールなどでグランプリに輝くピアノマラソン出演者も出てきています。楽しみです。   (工)