春まだ浅くとも (2011/04/01掲載)


 平成23年度の初日を迎えました。例年なら気持ちも新たにがんばるぞという気分になるのですが、さすがに今年ばかりは……。ちなみに文化会館は昨年と同じスタッフですので、相変わらずよろしくお願いいたします。

■野田秀樹の勇気

 週刊誌アエラ3月28日号の表紙がいたずらに恐怖をあおるものだとして、野田秀樹が同誌連載の自主降板を決めたことが報じられていました。それはともかく、野田演劇の話を。

 野田さんの主宰する野田地図(NODA MAP)の第16回プロデュース公演「南へ」が、2月から3月末まで池袋の東京芸術劇場で上演されました。地震で3月11日から13日までの4公演は中止でしたが、休演日を挟み15日には早くも再開されました。まだ施設点検も覚束ないホールが多い中、加えて自粛ムードが高まる中、これは相当に勇気ある決断と見えました。

 野田さんは、マスコミに煽られる人々の買い漁りや、異様なほどの自主規制の先に危ないものを見ています。日本人の心底には事大主義とでもいうべきものがある、というのは晩年の柳田國男の苦い述懐ですが、現に音楽や美術や演劇が自由にできない時代が2世代ほど昔にはあったわけで、それは自主規制の塊りのような時代でした。

 このような時に演劇公演を行うのは、震災で亡くなった方や被災し避難して苦しんでいる人たちを忘れろということではありません。劇場の火が消えるときは、そのような人たちのことを忘れ、ココロを忘れてしまう時だと思い定め、野田さんは上演再開に踏み切ったのです。

 うーむ、分かりやすくまとめようとして失敗しているような…。野田地図のHPに再開時の野田さんの舞台あいさつが載っているので、読んでみてください。題して「劇場の灯を消してはいけない」。舞台に携わる人や文化芸術に関心のある人すべてにとって必読ではないでしょうか。


■こんな時の東京は

 事業の打合せのため、先日久しぶりに東京に出張してきました。このような時期に行くのはどうかとも思いましたが、こんな時の東京の姿を見るのも得難い機会なので行ってきました。

 行きの飛行機でのこと。航路がいつもとは違いました。飛行中機長のアナウンスが「皆さま、左手前方には牡鹿半島が見えております」というではありませんか。びっくりです。空は快晴、海は美しく輝いて、眼下に広がるのは一見日本の美しい風景です。飛行機からでは被害状況は分かりません。ただ美しいとしか見えないのです。悲惨さが目に入らなくなる距離というものがあるのですね。それでもその後しばらく仙台湾に沿って南下すると、浸水した市街地や農地がはっきり見えてきました。あそこで亡くなった人、苦しんでいる人が大勢いると思うと、快適な飛行機で移動しているのが申し訳ないような、とても落ち着かない気分でした。

 都内では、街を歩いている人も少なく、あんなに歩きやすい休日の新宿や池袋は初めてです。省エネも相当本気で行われていて、車と宣伝の音が少ないのはいいですね。3月いっぱいクラシックの公演はほとんどが中止。ディズニーランドは閉まっているし、美術館・博物館も軒並み閉館です。その代りといってはなんですが、寄席は営業していました。

 計画停電と放射能不安と大館より余震の多い東京。東北関東大震災の影響は想像以上のものです。


■年間鑑賞券今年はお休み

 毎年楽しみにしている方も多い年間鑑賞券ですが、残念ながら今年度は発行いたしません。助成事業など割引のできない公演が多くなってしまったためですが、助成事業の読売日本交響楽団と吉田正記念オーケストラはそれぞれ通常の半額程の料金になりますからぜひお楽しみに。

 23年度事業のラインナップは、字数の関係で次回発表とします。ちなみに今年は結構な大物が複数来るかもしれません。ただいま着々と調整中です。といいながらメジャーな公演は勝手に発表できないのが辛いところですが。


■3つほど募集中

 年会費千円で先行予約や割引特典のある文化会館友の会の23年度会員募集中です。いつでも入会できますが、入るならやはりお早い内に。

 高校生イベント企画ワークショップのメンバー募集中。イベント企画やフリーペーパー制作に興味のある高校新1年生と2年生を熱烈に待ってます。遊べますよ。

 県内に二つだけの児童合唱団。そのひとつ、大館ジュニアコーラスの団員募集中。小中高生なら誰でも入れます。今年は名門西六郷少年少女合唱団と共演予定です。

 いずれも申込み・お問合せは大館市民文化会館(49・7066)まで。以上、どうぞよろしく。(陽)