文化会館にできること (2011/03/18掲載)


 大館市民文化会館スタッフ一同、この度の東北地方太平洋沖地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。


■都響の無事を確認しました

 地震が起きたのは当館で9日に行われた『東京都交響楽団大館公演』の2日後。指揮の小林さんとピアニスト小山さん、そして都響団員の皆さんは、函館市民会館でゲネプロ(本番前の通し練習)に入る直前だったそうです。函館公演は急遽中止となり、12日の八戸、13日の盛岡公演も中止になりました。オーケストラの国内移動は各自バラバラのことが多いので、移動の途中でしたら安否確認がたいへんだったでしょう。皆が一緒だったことで、全員無事に東京に戻れたとのことでした。

 大館市民文化会館は、13日まで貸館を中止して点検を行いました。一部設備に不具合が見つかりましたが重大なものではなく、お客様の安全に問題がないことを確認の上、16日からほぼ平常通り営業しています。ただ、重油や灯油の入荷の見通しが立たないことと節電に協力するため、館内は暗めになっていますし、寒いかもしれません。その点は悪しからずご了承ください。もっとも交通機関がこのような状況ですから、キャンセルが相次いでいますが。


■文化会館にできること

 16日、宮城県から大館に避難されているという方から電話をいただきました。20日に予定されている催しについて、このような時に開催するのは不謹慎ではないかというものでした。催しというのは「米代しげをチャリティー歌謡祭」。文化会館としては、安全か確認できて、主催者が挙行しようとする限り開催を拒みません。市民の皆さんにも文化会館の考えを知っていただく良い機会だと思いますので、少し書かせてください。

 文化会館の使命は「芸術文化の振興によって市民の福祉を向上させること」と条例に記されています。前提としてあるのは、憲法で保障された表現の自由です。いろいろな意見がありいろいろな表現があることを認めることは、特に日本のような例外を排除しがちな社会では絶対に必要なことでしょう。

 文化芸術には、悲しみを癒し、辛いときに元気や勇気をもたらす力があります。バンド・エイドなどの大がかりなプロジェクトもありますが、当館で行うアウトリーチ(ホールの外に演奏家などを派遣する事業)でもそういった体験をいくつもしてきました。こちらの不安をよそに障がいをもった方がクラシックの演奏に心から喜んでいる姿、難病の方や自ら余命の長くないことを知る方が涙を流して聴き入っている姿を見るとき、芸術の力を見せつけられると共に、私たちの仕事が文化芸術を通してひとの命に少しでも輝きを加えられるものであることを教えられたのです。

 20日の「チャリティー歌謡祭」は、電話をくれた方がいぶかしんだように、出演者が自分たちの楽しみもあって続いている催しです。しかし、そのこととチャリティー精神は反するものではありません。主宰する米代さんは毎回収益を福祉のために寄付しています。楽しいから続く、それが社会のためになる。これはいけないことでしょうか。米代さんもこのような時に開催していいのかと悩んだそうです。迷った末、間違ったことをしているわけではないと開催を決断しました。その決断を文化会館は尊重します。

 大館市民文化会館は、市民が文化芸術を楽しんで鑑賞し、また自ら出演して楽しむための場を提供するためにあり、われわれ職員はその機会を創り提供するために多くの事業を行い、また施設を貸し出しに供しています。そして市民を信頼し、誇りに思っています。ここまで書くと照れくさいですが、ほんとです。ですから、市民・国民の権利は能う限り守ります。


■ジュニアコーラス“春”コンは中止

 3月20日に予定していた大館ジュニアコーラスの「“春”のコンサート」は、諸般の事情により中止とさせていただきます。できれば延期として春の内に開催したいと思っています。その時はどうぞよろしく。


■23年度友の会会員募集中です

 大館市民文化会館友の会の23年度会員を募集中です。入会金は無料、年会費1000円です。自主事業の割引、先行販売、情報紙送付などの特典があります。23年度の自主事業は、読売日本交響楽団(ソリストに宮本笑里)、吉田正記念オーケストラ、西六郷少年少女合唱団、それから正式発表はまだですがメジャーなポップスコンサートもあります。ほかにもいろいろです、どうぞよろしく。(陽)