東京都交響楽団大館公演の話――指揮者・小林研一郎 (2011/01/21掲載)

 3月9日(水)の「東京都交響楽団大館公演」好評発売中です。ということで、前回に続きシリーズでこの公演の見どころ聴きどころをご案内していきます。雑談に流れるかもしれませんが。今回は“炎のコバケン”こと指揮者小林研一郎編。

■コバケン初体験は「メサイア」

 まずは個人的なコバケン体験を。最初は、はるか昔70年代のことです。進学した都内のR大学はミッションスクールで、毎年末学生オーケストラと合唱団によるヘンデルの「メサイア」全曲の公演が行われていました。英国王ジョージ2世が感激して思わず立ち上がったため、なぜか現代の日本でも起立が慣例になっているハレルヤコーラスの入っているオラトリオですね。私の大学1年生の年にメサイアを指揮していたのが、若き日の小林研一郎でした。これがまあ、ひどかった。
とは言ってもひどかったのはオケの方。オケのメンバーには初心者が少なからずいたようで、音は外れるし、当然ハーモニーも悪く、ちょっと悲惨でした。指揮者のせいにするには酷な状況だったと思います。もっとも今はオケの質も向上しているようです。会場もぜいたくに東京芸術劇場の大ホールだし。

 それからしばらくたって小林研一郎の名前が一躍脚光を浴びます。74年の第1回ブダペスト国際指揮者コンクール優勝。その後主に東欧と日本で大車輪の活躍を始め、いつしか「炎のコバケン」の異名をとるカリスマ指揮者になっていきました。東洋人が「プラハの春音楽祭」の開幕コンサートでスメタナの「わが祖国」を振るなんて、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを振るくらいの大事件ですよ、実際。

 しかし、私にとってのコバケン体験の2回目は、やっと数年前の冬、サントリーホールでの東京フィル。仲道郁代のピアノでチャイコフスキーのピアノ協奏曲、そして同じく交響曲第5番でした。チャイコの5番はご存知のようにけれん味たっぷりの曲で、コバケン十八番中の十八番です。いやぁ、煽る煽る。終楽章のゲネラルパウゼ(全休止)の見得の決まっていること。満場大拍手でした。仲道さんも華やかで良かったですよ。

 以上、私は残念ながら2回しか小林研一郎を聴いていません(昨年の鷹巣、能代の東フィル公演も聴けませんでした)。だからこそ、コバケンをまた聴きたいという気持ちは強く、さらに市民の皆さんに聴いてもらいたいという気持ちも強く抱いてきました。文教振興事業団に奉職以来、運のいいことに念ずれば通ずという経験を何度もしてきましたが、今回もまさにそう。しかも地方公演といえばお決まりのような「新世界より」も避けられたし。「田園」だって大ポピュラー曲ですが、大館では演奏されたことがないはずです。

 皆さん、ぜひご一緒にコバケン体験を!


■中ホール舞台機構をリニューアル

 20年度から年次計画で取り組んでいる文化会館の大規模改修ですが、昨年の大ホールに続き、今年は中ホール舞台機構のリニューアルが始まりました。内容は、吊り物関係のワイヤーやモーターなどの更新、舞台の各種幕の更新、どん帳のクリーニングなどです。頭上から重量物が落ちてくるなどの事故があれば命に係わりますから、これからも安心安全に文化会館を使用していくためには必須の工事です。このため、1月20日から2月末まで中ホールは使用できませんが、どうかご理解ください。

 なお、リニューアルの一環として中ホールに移動式の反響板が導入されます。これにより中ホールの響きがかなり改善されることになります。どうぞお楽しみに。(陽)