中世の巨人「カンアミ」を観よ (2010/08/20掲載)

■まもなく「カンアミ伝」

 カンアミという名前を聞いたことはありますか?カンアミ(観阿弥)とは猿楽中興の祖であり、今日に伝わる能楽の元祖ともいうべき人物のことです。室町時代初期、田楽に押されて細々と興行していた猿楽を、一躍表舞台の芸能に引き上げ、いろいろな試みを通じてその芸術性を飛躍的に高めました。そしてその子ゼアミ(世阿弥)とともに、能楽が日本の代表的な芸能として長く栄えていく礎を築いた、日本芸能史上とりわけ重要な人物であります。

 観阿弥の出自については、観阿弥の母が楠正成の妹であったとか、忍者と深い関係があったとか、いろいろな説が流通していて、そういう意味でも非常に興味深い人物といえます。息子・世阿弥の「申楽談義」(世阿弥の芸談を筆録した能楽の伝書・芸道論)によれば、大和申楽は泰河勝から起こり、その流れを汲む山田申楽の太夫の三男が観世丸だったとされています。この観世丸が後の観阿弥で、やがて主宰することとなる大和の結崎座こそが今日に伝わる観世流の出発点となったものでありました。

 私の聞きかじったところによると、観阿弥が楠正成ら南朝の勢力と深い関係があったことは確からしく、観阿弥の死後、世阿弥やその長男の元雅が迫害されたのも、南朝との因縁が災いしたかららしいとのこと。当時の大和は、東大寺などによる古代的な支配体制に挑む勢力が現れ「悪党」などと呼ばれていましたが、楠正成はそうした勢力の代表として、圧政に苦しんでいた者たちを組織しつつ、強大な勢力を築き上げつつありました。そういった社会情勢を考えると、観阿弥ら下層の芸能者が、そうした勢力と結びついた可能性は十分考えられるわけです。そんな激動の時代を芸に生きた観阿弥の生涯は、能楽を大成した芸人としてもさることながら、人間・観阿弥が非常に興味深い存在であると思われます。

 さてさて、そんな観阿弥の生涯がミュージカルになりました。既にご存知の方も多いかとは思いますが、我が秋田が誇る劇団「わらび座」の手によるもので、既に全国で公演が始まっています。このミュージカルは、わらび座創立60周年を記念して誕生した作品で、全国津々浦々の民俗芸能を収集し、ある種民俗芸能のオーソリティとしての一面も持つわらび座の真骨頂といえるでしょう。観阿弥の芸と恋、芸における世阿弥との対立を中心に、家族や親子の絆、そして誇り高く生きる人間たちが生き生きと描かれる舞台。わらび座ファン、そして能楽ファンのみならず、すべてのお客様にとって必見の舞台となること間違いありません。

 と、ここまで書いてふと思ったのですが、何やら小難しい舞台だとか思われちゃいましたか?たしかに能楽というと、どうしても「難しい」とか「敷居が高い」というイメージを持たれがちですが、この舞台は、能楽を大成した「人間・観阿弥」の生き方を描いた物語であり、決して難しいものではありません。民俗芸能をモチーフとした歌や踊りがダイナミックに演じられ、非常にエンターテイメント性の高い楽しめる舞台です。9月4日(土)14時開演。大館市民文化会館大ホールにて開催。わらび座「カンアミ伝〜血と祈りの花〜」、チケット好評発売中です。みなさまお誘いあわせの上、ご来場をお待ちしております。(山)


■まもなく「BEGIN」

 沖縄の人気グループBEGINのツアーコンサートはいよいよ9月7日(火)です。他のホールはそろそろ売り切れ間近かのようですが、大館の皆さん良かったですね、まだけっこういい席が取れますよ。気持ちよくなるコンサートなら今年はビギンです。一律6000円。でもお急ぎを。

 9月は他にも、17日(金)の「布谷史人マリンバリサイタル」(リベルタンゴ国際音楽コンクール優勝記念!)、30日(木)にはおなじみの超エンタテインメント「グランディーババレエ団」など話題の舞台が目白押しです。文化会館では、一足早く芸術の秋が盛りになってきました。(陽)