落語で暖かくなる (2010/01/22掲載)

■落語も生がいちばん

 文化会館28年余りの歴史の中で、文化会館への異動を私ほど喜んだ人はいないと思っています。自分がいいと思うものを自分で企画できる、しかも人のお金で。誤解を招きそうな表現ですが、そう思ったんだから仕方がない。こんなに自分の経験と趣味を生かせる職場はないだろうと。ま、そんなに単純なものじゃないとすぐに分かってくるんですが。

 以前にも書いたことがありますが、まっさきに思ったのは、これで志ん朝師匠の落語会ができるかもしれない、ということでした。まさかその年の内に63歳の若さで亡くなるなんて、夢にも思っていませんでしたし。まずは落語会を立ち上げて、2・3年したら志ん朝さんをぜひ、という腹づもりで「おおだて特選落語会」の企画は始まったわけです。もちろん大町の落語大好き人間、H谷川T彦さんの存在も大きかったわけですが。

 志ん朝さん亡きあと落語界の沈滞を危惧した人は多かったはずですが、あれから8年余り、落語界は沈滞どころかブームの様相を呈しています。おおだて特選落語会出演者の名前から拾っても、喬太郎、昇太、彦いちなどの新作派が元気いっぱい、名人の域に入った権太楼、さん喬両師匠は脂の乗ったみごとな芸を披露してくれました。

 落語会を続ける中で我々が感じたのは、話芸はライブに如かずということ。志ん生、文楽、円生はじめ昭和の名人の高座はCDやDVDで視聴できるし当然ながらすばらしい芸ですが、それでも実際にホールでいい噺を聞いたときの満足感に比べると何かが足りないと思わざるを得ません。それはつまり、生ではないからです。舞台芸術・芸能はすべてそうですが、演者と観客と場(空気)の3つが揃ってはじめて完成するもの。そしてありがたいことに大館のお客さまはお世辞抜きでなかなか質のいいお客さまです。

 楽しい話ばかりでなく悲惨な話やセコイ話もありながら、それでも「人間ってなかなかいいものだ」と思わせてくれるのが落語。毎回落語会がハネて会場から出てくる皆さんの表情がニコニコと満足感に満ち溢れているのが私たち会館職員へのご褒美、いちばんうれしい時です。落語を聞くのに難しいことは何もありません、ただ楽しんでくれればいいのです。

 明日23日は14回目のおおだて特選落語会。他に類をみない新作のミュータント三遊亭白鳥と、立川流四天王(@広瀬和生)のひとり立川談笑の爆笑二人会を、自信をもってお勧めします。チケットまだあります。電話で予約をいただければ前売料金(一般2000円)で結構です。皆さまお誘い合わせてのご来場をお待ちしております。


■高校1・2年生の皆さんに

 2月から来年の3月まで、高校生を対象にアートマネジメントを学び体験するワークショップを開催します。

アートマネジメントとは、簡単に言えば芸術(家)と市民を結ぶ仕事全般のことで、近頃では講座やコースをもつ大学も増えています。今回のワークショップでは、専門的な勉強というのでなく、若者がまちおこしの視点をもって文化会館を使って何ができるかを、楽しみながら一緒に考え活動していきたいと考えています。

 舞台芸術に詳しい必要はありません。それよりも、好奇心のある人、面白いことや人のために活動することが好きな人を求めます。対象は高校1・2年生で来年度いっぱい活動に参加できる人。募集人員は10名以内を予定しています。まもなく募集開始。お問合せは大館市民文化会館(49−7066)まで。 (陽)