『“我がまちの演奏家”のいる楽しみ』 (2005/09/02掲載)

「うまい演奏はいくらでもあるけれど、心打たれる演奏はそんなにあるものじゃない。きょうは久々に心打たれる演奏に巡り合った。布谷さんや大沢さんを持つ大館は幸せだよね」。国内外で多くの音楽体験を持つ友人が言った言葉です。八月二十二日に行われた布谷史人マリンバリサイタルには、おかげさまで大勢の方に詰めかけていただきました。

早いもので布谷さんの大館市民文化会館でのリサイタルは今回で四回を数えます。この間、米国留学やいくつものコンクール入賞、そしてついに今年の優勝と、順調に、かつ着実に力をつけてきました。とは言っても、布谷さんのキャリアはまだ始まったばかり。演奏家の世界は、コンクールの実績がすぐに演奏機会に結びつくほど甘い世界ではありません。それでも、今回のリサイタルを聴いた皆さんはきっと布谷史人の音楽家としての成長を肌で感じたはず。そしてきっと、今後も応援していきたいと思ってくれたはずです。

ところで、いよいよ芸術の秋を迎え、文化会館主催のコンサートも目白押しです。七日にはおなじみのピアニスト小山実稚恵さんの、これも四回目のリサイタルが行われます。前回平成十三年のリサイタルでは、落雷によるしばしの停電の間も何事もないように演奏を続け、聴衆に大きな感動を与えた小山さん。デビュー以来常にトップを走り続ける彼女の二十周年記念リサイタルは、集大成とも言えるオールショパンプログラムです。穏やかでさわやかな性格も魅力ですが、何より聴く者を幸せな気持ちにしてくれる彼女の演奏に、ひとりでも多くの人が触れていただきますように。

大館市民文化会館は、市民の皆様がなるべく多くの演奏家の演奏に触れる機会づくりを追求しています。その中で、お客様がこれはと思うアーティストについては、何度も繰り返し鑑賞の機会をつくりたいとも思っています。お客様と文化会館が一緒に芸術家を応援し育てていけるまちになったら、大館に住むことの喜びも増し、文化会館の存在意義もあるというものです。皆さん、今年は布谷史人と小山実稚恵をどうぞご贔屓に。 (陽)